同居してた家のじーさん、家族でご先祖の墓参りに行った帰りにたまたま一度蕎麦屋に寄ったんだ。
まぁ何て事も無く普通に皆で蕎麦食って帰ったんだけど、その次の年から墓参りに行く帰りにそこを通る度に必ず
「ここの蕎麦は美味い。美味いんだなぁ...」と毎年言うんだな。
俺も家族も実は皆わかってた。わかってて無視してた。
そこはただのチェーン店。
味だって取り立てて美味いもんでもなかった。
当時俺や姉キがじーさんや家族と出掛けるのを嫌がる年頃になってて、
俺に至っては家でもわざわざじーさんと食事の時間をずらしたりして食っていたため、
墓参りの時くらいしか全員一緒に食事するチャンスが無いと思ったんだろう。
俺にとって何て事も無かったあの全員で蕎麦食ったあの時間がじーさんには忘れられなかったんだろう。
結局2度とその蕎麦屋に行くことも無く、俺が大学で親元を離れている時にじーさんは逝った。
今でもその店の前を通る度に思う。
じーさんが 「ここの蕎麦は美味い」っていつものやつが始まった時に一度くらい
「そう?じゃ、親父、寄ってかねぇか?」って言ってやればよかったなぁ、と。