高校生の頃の晩飯におばあちゃんが卵焼きを焼いた。小さい頃よく作ってくれた砂糖がたくさん入った甘い卵焼き。
味覚が大人になってしまった高校生の俺にはもう甘ったるく感じてしまい
ほとんど食べずに残した。
おばあちゃんは笑顔で言った
「もう大人だもんね…こんな甘いの食べんよね…」
俺は悪気も無く「うん、今度は砂糖少ないので作ってね」と言った
そうするとおばあちゃんは
「そうだね…でも、おばあちゃんももう歳だからあと何回作ってやれるかねえ…」
と少し悲しそうな顔をした。
次の日の学校で授業を受けていた俺に家から急ぎの電話が掛かってきた。
何事かと急いで職員室へ行き電話に出た俺の耳に母の言葉が飛び込んできた。
「あんたが学校行った後におばあちゃん急に具合が悪くなって…」
そこから先のことはよく覚えてない
冷たくなってしまったおばあちゃんが家に帰ってきた後
俺が何気に冷蔵庫を開けると中には俺の名前をサインペンで書いた容器があり
それを開くと卵焼きが入っていて
食べるととても甘くて…甘すぎて
何か知らないけどぼろぼろ涙がこぼれてきた。そのことだけ今でも覚えている。
あれから10年
冷たくなったおばあちゃんも、また温かくなって今はハワイへ移住してダイビング三昧の日々です。